ガスコーニュ便り

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原田眞人監督『わが母の記』

たとえ忘れてしまっても、きっと愛だけが残る。

というキャッチコピーのついた映画『わが母の記』を観に行きました。
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日本では2012年春に封切られたものです。


第7回現代日本映画祭 kinotayo(金の太陽)がフランス各地で開催されており、我が町でも3本の日本映画が上映されました。
本田隆一監督『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』、新藤兼人監督『一枚のハガキ』、そして原田眞人監督『わが母の記』。
『大木家の・・・』には食指が動かず観に行きませんでしたが、他の二作品は楽しみにしていて、映画が大好き、日本映画をこよなく愛する義母と夫と3人連れだって、観に行ってきました。


この映画の原作は、井上靖の自伝的小説『わが母の記 花の下・月の光・雪の面』(1975)。義母と夫はこの小説を読んだことがあり、私だけがなんの知識も持たずに映画を観ました。

映画は主人公の小説家、伊上洪作の父が亡くなるところから始まります。残された母の八重は少しずつ老いを深め、ものを忘れてゆくように。
洪作は幼い頃の八年間、両親、そして二人の妹と離れ、曾祖父のお妾さんに預けられていたのですが、「母に捨てられた」という思いをずっと持ち続けてきました。記憶をなくしてゆく母に向き合うなかで、洪作は幾度もその思いを八重にぶつけますが、暖簾に腕押し。そうこうするうちにも母の認知症は進んでゆきます。キャッチコピーの意味が分かるのは物語の最後の最後。
物語は1960年からの10年ほどを描いたものなのですが、そのなかで当然、八重が年老いてゆくだけではなく洪作も年を取り、娘たちも成長してゆきます。八重と洪作との関係が主として描かれてはいますが、同時に伊上家の物語でもあり、とても感動的でした。
役者も皆素晴らしく、分けてもやはり主人公である洪作を演じた役所広司はいいなあ、と思いました。樹木希林は「認知症の役は誰もやりたがらないから私に回ってくる」と言ったそうですが、彼女の温かみ、可笑しみのある演技だからこそ、認知症のやりきれない悲しみを、それ以上強いものに感じずに観ていられました。本当に暗く演じてしまうと、観るのも辛いですから、いい人選だと思います。洪作の妹、志賀子を演じたキムラ緑子もよかったなあ。もともとファンなのですけれど。

原田眞人監督の映画は初めて観たのですが、俄然『突入せよ!あさま山荘事件』や『クライマーズハイ』『魍魎の匣』など、観てみたくなりました。


余談ですが・・・
新藤兼人と言えば多作の人ですが、これまでに観たのは『午後の遺言状』だけ。
それもいつ観たのか思い出せないほどの昔・・・人の老年期を扱った映画としてよく『八月の鯨』が引き合いに出されていました。
さらに話が逸れますが、『八月の鯨』は私のお気に入りの映画で、何度となく繰り返し観ています。
義母は新藤兼人の『裸の島』を学生時代に何度も観たそうです。
あまりにも印象的で、強烈に惹かれて、複数回映画館へと足を運んだそうな。
『一枚のハガキ』は戦争を生き抜き復員した男と、その戦友で、戦争で死んでしまった男が郷里に残した妻との物語です。
戦中、戦後の重苦しい時代の人々を扱った映画ではあるけれど、人の可笑しみを切り捨てずに取り込んでいること、希望のある終わり方をしていることで、悲しみに終始しない映画でした。
悪くないのですが、どういうわけか演者すべての演技がとても大げさで非常に演劇的だったのが気になりました。
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by paloise | 2013-01-31 01:13 | 私の映画館

米原万里『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』

この10年読んだもののうち、私の脳天に最も強烈な印象を残した本。
それは、米原万里の『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』です。
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ロシア語同時通訳者・翻訳者であった米原万里(1950-2006)のこのエッセイは、2002年の大宅壮一ノンフィクション賞受賞作品でした。
当時書店で平積みになっていたことを想い出します。
それが私の米原万里との出会いのきっかけになりました。
視野が広く、知識の泉のような、そして自由な精神を持つこの人のエッセイは、どれを読んでも面白いので、大好きです。


父親が日本共産党員であったことから、1960年から1964年までの少女時代をプラハで過ごし、プラハの、共産党関係者の子どもが集まるソビエト学校に通った米原万里。
30年の年月を経て、当時親しくしていた3人のソビエト学校の級友たち(ギリシャ人のリッツァ・ルーマニア人のアーニャ・ユーゴスラビア人のヤスミンカ)の消息を探し当て再会、その様子を、当時と現在とを交錯させながらまとめたのが『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』です。
級友ごとに書き分けた、3章立ての構成。


級友たちに対して当時抱いていた気持ち、疑問、矛盾、子どもだった彼女には理解できなかったたくさんのことを、大人になって彼女たちと再会することで確かめ、それを通して中東欧のここ四半世紀の大きな流れを描き出し、政治を行う人とその周辺の人々、そして市井の人々の姿を描き出してゆくその手法も、小気味よい文体も、すべてが圧倒的に面白く、ひたすらしびれっぱなし。
しびれっぱなしだけれども、脳みそをわしづかみにされて揺さぶられ続けるような、凄い記録文学です。
何度読んでも非常に面白く、飽きることはありません。


何度読んでも飽きないけれど、初めて読んだときの衝撃は一度きり。
未読の方がいらしたら、その衝撃を味わえるのですからうらやましいのです。


米原万里(2004)『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』角川文庫
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by paloise | 2013-01-29 01:43 | 本棚

愛の神 ÉROS の名を持つお茶

フレーバードティーはあまり得意ではないのですが、Mariage Frères のそれは特別。
香りが強くても嫌みがなく、お茶そのものの味わいもよいので大好きです。

Mariage Frères (マリアージュ・フレール)は日本にもいくつか支店のある、フランスのお茶専門店。
世界各地から集めた茶葉を多種多様にブレンドし、香りづけを施しています。
紅茶だけでなく、緑茶や中国茶のフレーバードティーもたくさん。
もちろん原茶も販売していますが、実は未体験。こちらも大変に美味ということで、いつか試してみたいと思っています。

ちなみに Mariage というのは苗字、Frères というのは兄弟という意味の語、つまりマリアージュ兄弟の創立した会社です。


タイトルにある éros(エロス)という名のお茶は、マリアージュでもわりと人気だと思われるフレーバードティーの一つ。
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義弟(といっても年上^m^)にオススメされて好きになりました。
ピンぼけ写真でスミマセン^^;

エロスは皆さまご存じのように、ギリシャ神話における愛の神。
すべての神々のなかで最も美しく、不死身、知性に富み思慮深い神だそうです。

その名を持つこのお茶は、ハイビスカスの花で香りづけされた紅茶。そこにヤグルマギクの青い花弁が甘みと魅力を与えています。
甘酸っぱい香りが非常に強く、初めはライチのような香りと錯覚しました。
茶葉自体の香りはかなり濃いのですが、入れてみるとその香りは和らぎます。
くらりとするような甘酸っぱい香りは確かに官能的で、エロスという名がふさわしいかも。
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by paloise | 2013-01-26 22:28 | 飲みもの

はじめまして

画面の向こう側の皆さま、初めまして。
ピレネー山脈を臨むフランス南西部はポーという街に住む、paloise と申します。
アットコスメの美ログでちょこちょこ書いているのですが、美容に関することだけではなくあらゆることについて書きたいと思い、こちらでもブログを始めることにしました。
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連日雨模様のポーより、不定期更新であれこれ綴ってゆこうと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
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by paloise | 2013-01-24 02:44 | はじめに

ピレネー山脈の見えるフランスの街から三方を山に囲まれた古都に引っ越しました。
by haruka
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